こんにちは。エファジャパン事務局です。
今号でも海外事業担当・鎌倉幸子のカンボジア訪問記を紹介いたします。今回はカンボジアの図書館にまつわる物語です。
皆さんは、今まで大切に保管してきた国の蔵書が突然失われるという事態を想像できますでしょうか? カンボジア内戦後、国立図書館の書架を覗くと、そこに残された本は、たったの500冊・・・
(上記写真は500冊の一部です)。
それが現実に起きた現場で、再度本を集め、国の文化を守るべく奮闘している国立図書館員の物語を、ぜひご一読ください。
(事務局)
カンボジア国立図書館は、インドシナのフランス植民地政策により1924年に設立されました。カンボジアが1953年にフランスから独立した後も、「国立図書館」として、多くの方に向けて 門戸を開いてきました。
独立後の1950年〜60年代は、カンボジア文学の黄金期。多くの作家が活躍し、多くの本が出版されました。
しかし1975年に政権を取ったポル・ポト時代、国立図書館は軍の倉庫や養豚場として使われます。そして焚書政策を取った政権により、国立図書館は蔵書の多くを失いました。
そして、当時働いていた図書館職員のほとんどが殺害されました。
「ポル・ポト時代を生き抜いたクメール語の本は 500冊しかありません」
このお言葉とともに館長室の奥にある倉庫へ私を案内してくれたのは、カンボジア国立図書館長のクノット・ヴィボラさんです。
500冊の本を目の当たりにすると、すでに変色していて、触ると崩れてしまいそうです。
「現在、力を入れているのがデジタル化です。特に内戦の前に出版されたものをデータ化する作業を、急いでいます。いま取り組まなければ、消滅してしまう物語があるでしょう。文化を守る・残すことは私の使命です」
クノット・ヴィボラさんは、ポル・ポト時代の1976年、14歳の時に両親と6人の兄弟姉妹を亡くし、家族で唯一の生存者となりました。
その後は親戚に引き取られます。幸運にも親戚は、我が子のように教育を受ける機会を、提供してくれたそうです。
「私は大学で美術の勉強をしていました。
1987年に国費留学生として留学したポーランドでは、文書資料保全について学び、修士号を取ることができました」
その後、王宮や情報省での勤務を経て、2002年よりカンボジア国立図書館の館長を務めています。
「内戦が終わり、一人ぼっちになった自分の将来を考えると、何も見えない暗闇の中に取り残された気持ちになりました。
ある日、ふと目にしたカンボジアの遺跡の壁画を、私は“美しい”と思いました。
“あぁ、カンボジアには美しいものがまだ残されているんだ。だったら私は、この美しいものを守り、残していこう”
そう心に決めると、生きる気力が湧き上がってきたのです」
文書資料保全に全力を尽くす、そんなクノット・ヴィボラさんも定年まであと3年です。
「カンボジアの国立図書館は1924年に建設された当時の建物を使っています。歴史的建造物として残すべきだと思います。ただ…書庫がないのです」
カンボジアの国立図書館は平屋建て。地下室も、納本される本を管理する場所もありません。
資料を残していくためにも、本の保管ができる建物の増設を行いたいと国に要請を出していますが、なかなか進まないそうです。
「ポーランド大使館に押しかけ、図書館の増設計画の話をしました。他にもあたっていますが、よい返事はまだもらえていません」
あと3年の間に、増設の道筋だけでもつくりたいと、焦る気持ちを抱えながら日々の業務を行っていました。
私が図書館を去る時に、うれしいお誘いを受けました。
「今、納本制度を始めました。出版社から1タイトルにつき5冊の納本を受けています。
また、出版文化の発展のため、図書館では毎年12月にブックフェアを開催し、読書の楽しさを知ってもらう取り組みをしています。
もしよかったら12月にカンボジアに来ませんか?」
皆さんもカンボジアの出版のことを知るために、そしてクノット・ヴィボラさんに会いに、カンボジアに来ませんか?
(鎌倉 記)
身の回りの不要品を、社会貢献へ
現在エファジャパンでは、カンボジア・ラオスの障害がある子どもが使う教材の開発事業を行っています。上記 国立図書館のクノット・ヴィボラさんに日本の障害児関連図書をお見せしたところ、「カンボジアの皆さんにも、このような本があることを知って欲しい」、「国立図書館にも、このような本を置きたい」と大いに関心を示してくれました。
この事業を始め、エファの活動のため、通年でリサイクル募金を集めております。
募集の対象は、本、CD/DVD、切手、ハガキ、年賀状、テレフォンカード、ゲーム、骨董品、ブランド品、懐かしのおもちゃなどなど。
不要品を捨てずに「国際協力」へ活かす活動にぜひご参加ください!
ご寄付の方法、ご送付先などの情報は、以下の「リサイクル募金を詳しく見る」をクリックすると、ご覧いただけます。
ご不明な点は、事務局までお気軽にご相談ください。
発行人:伊藤道雄
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