2022年度年次報告書
すべての
子どもたちが
可能性と
創造性を発揮し、
自分ものがたりを
描ける社会に。
Empowerment For All
エファジャパン
内戦のさなか、学校は軍の施設や家畜小屋として使われた。
教科書はすべて燃やされるか土の中に埋められた。
そして先生方は処刑場へと連れていかれた。
内戦が終わっても、僕の村には地雷が多く残された。
地雷を取らないと、学校は建てられない。
学校ができたのは僕が生まれる直前の10年前だと聞いた。
だから、僕のお父さんもお母さんも
小学校に通うことができなかったらしい。
毎日、朝から日が暮れるまで畑を耕して、
野菜を売りながら僕たち兄弟を育ててくれたお父さん。
どれだけ疲れていても、一緒に水浴びをしてくれたお父さん。
お父さんが、お金をだまし取られた。
一生懸命つくった野菜が、ただ同然で運ばれていく。サインをしてしまった一枚の契約書。「 学校に行っていたら」「字さえ読めたら」 そう言って悔し泣きするお父さんの背中を見て、思った。
「どうか僕に、字をください」
僕が字を読めるようになり、 お父さんのように悲しむ人をこの村からなくしたい。 そのためにも、僕は本を読みたいんだ。
カンボジア、ラオスでは、内戦で学校や図書館が閉鎖され書物は焼かれました。子ども向けの本もゼロから作り直さなければならず、障害児のための教材は皆無に等しい状態です。
開発途上国に暮らす障害者が利用可能な書籍(点字、音声、大活字本など)は非常に限られ、毎年出版される本の中でわずか1%以下と推定されます。世界盲人連合(WBU)はこの状況を「本の飢餓(Book Famine)」と名付けました。
字が読めることは、生きることに直結します。字が読めないことが原因で起こる、貧困や悲しみの連鎖を断ち切りたい。そう願い、2022 年から、エファは「本の飢餓」の撲滅のための事業を展開しています。
赤ちゃんのとき、ポリオ(急性灰白髄炎)にかかりました。いまでも足に障害があり、歩くのが困難です。
「勉強する必要なんてある?どうせ障害者は仕事に就けないでしょ」
「障害者は、生きようとするよりも、死んだ方がいいんじゃない?」
いつもこんな言葉を投げつけられ、毎日、泣いていました。
二年前、村にチルドレン・スタディ・クラブができました。 同じように障害がありながらも学びたいと願う友だちと出会い、一生懸命勉強しています。クラブの先生は、いつも温かいまなざしで私を見つめてくれます。 今年、何百人もの人が集まる式典に代表として選ばれ、詩の朗読をしました。気が付けば、私をからかう人はいなくなりました。私は将来、先生になって、障害がある子もない子も支えたい。
「 私は、自分の夢を実現するために努力を続ける」 私たちのことを想い、支えてくれる、遠い国・日本で暮らすあなたに、お礼とともに、私の決意をお伝えします。いつかお会いできる日を楽しみにしています。
サトスレイ・トーさん (小学校6年生、12 歳)カンボジア
僕は弱視です。限られた視界の中にあるものしか見えません。世界中の人たちは、さまざまなものを見ながら学び、働き、おいしい食事を目で楽しみながらいただき、そして美しい風景を見て感動する…そんな話を聞いたとき、僕の毎日の世界にはそんな光景は存在しませんでした。
小学校に通うようになっても、僕は教科書に顔を押し付けるように近づけないと文字が見えません。近所の幼馴染でクラスメートのヴァラックくんが、隣で教科書に書いてある字や数字を耳打ちしてくれます。ヴァラックくんや両親がいなくなったら、僕はどうやって生きていけばよいのだろう。そう思うと、どうして生まれてきてしまったのかと思うこともありました。
2021年に障害児が通うチルドレン・スタディ・クラブができました。僕はクラブで授業を耳で聞き勉強をしていました。ある日、クラブを運営するCADDPの代表が「隣の州で、無料で目の手術をしてくれる眼科がある」と教えてくれました。2022年3月に僕は手術を受けました。まだメガネは必要だけど目が見えるようになりました。目が見えない時は、悪いことをしている人を見つけることはできなかったけど、これからは僕が村人の目となって、この村を守っていきたいんだ。
ペット・パヌットさん (小学校4年生、10 歳) カンボジア
図書室に来ると幸せな気持ちになります。本を読むのが好きで、いつも図書室で本を借りては家で妹と一緒に読んでいます。両親はあまり読み書きが得意ではないので、僕が本を読んでいる姿を見て喜んでくれています。本から多くのことを学んでいます。僕の暮らしている村は病気の人が多くいます。僕の両親も病気がちです。村のお医者さんになるのが僕の夢です。
セン・ヴォングパックデイさん (小学校5年生、11 歳) ラオス
私は、将来、小学校の先生になりたいです。そのために一生懸命勉強しています。でも勉強ばかりだと疲れるので、友だちとおもしろい絵本を読んで大笑いしています。図書室にある本からたくさんのことを学んでいます。特に、人としてしてはいけないこと、すべきことを民話が教えてくれます。日本の皆さん、本当にご支援をいただきありがとうございます。
ウィッキー・ムアングケウさん (小学校5 年生、10 歳) ラオス
2013年2月の開館以来、私は図書館の担当をしています。小学校4年生と5年生の児童が運営の手伝いをしてくれるので助かっています。図書館ができてから、特に児童の読解と作文の能力が向上しました。以前は、2年生の児童でも読み書きが不自由な状態でした。図書館ができ、本を読むことが習慣となったため、児童は読み書きができるようになったと言えるでしょう。
新しい情報を知ることができるようになったため知識も増えました。授業で質問をすると、あてられた児童は簡単に答えることができるようになったと担任の先生から報告があります。子どもは「白紙」のような存在です。そこに良いことも悪いことも描けます。図書館で子どもたちが受け取る新しい情報、新しい知識は、白い紙の上に描くための絵の具です。私たち大人は、何を子どもたちに届けていくかを常に考える必要があります。図書館に来る児童は毎日本を読み、おはなしを聞いて「良いこと」「悪いこと」の区別を理解していきます。将来、社会で生きる力をつけるためにも、図書館は大切な拠点だと思います。
ブンクワン・インペアングさん (図書館担当教員、幼稚園教員) ラオス
「ラオス子どもの家財団」と協働で、障害児が多く通う小学校で「思考とスキル向上のための読書推進プロジェクト」をスタートさせる予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、1年以上の学校閉鎖が行われ、支援対象校決定の調査に遅れが生じました。学校閉鎖が明けた2023年2月、ビエンチャン都内の学校を実際に訪れ、対象となる2校を選出しました。
●サパントング・ヌー小学校:全校生徒94人(内、障害児32人)
●パサイ小学校:全校生徒55人(内、障害児17人)
ラオス子どもの家財団内の「モデル図書館」の設置は完了し、蔵書を整え、インターネット検索ができるPCも整備しました。
ラオスの公共図書館では、図書管理システムがほとんど普及していないため、多くの図書館で、貸出・返却を手書きのノートで管理しています。また利用者は、読みたい本や調べたいことがある場合、その本の有無を図書館員に尋ねる必要があります。
エファは、図書館と利用者の効率化および利便性を高めるため、ラオス国立図書館と協働で、県立図書館への「図書管理システム導入」を進めています。2022年にはラオス北部、フアパン県立図書館へシステムの導入支援を行いました。PCの設置、必要な備品一式を配布し、図書館員の研修会を実施。その後、使用状況をモニタリングし、追加の技術指導を行いました。
今後も図書管理システムの普及に取り組み、各図書館をシステムで繋ぎ、全国で蔵書検索ができるようになることを目指しています。
ラオスの公共図書館の開館時間は、平日9時から16時まででしたが、2021年度から、仕事帰りの人や学生が利用しやすくするために、平日は18時、また、土曜日は9時から12時まで、開館時間の延長を実施しました。それにともない、職員へ時間外手当を支給しています。
また、都立図書館の運営について、2022年10月に政府と協議し、これまでエファが行ってきた支援を順次収束させ、2025年からは予算を含め政府による運営を行うことで合意書を交わしました。
ビエンチャン都およびサワンナケート県の、8校の小学校図書館・図書室の運営支援として、絵本や文房具一式を配布しました。
図書館・図書室が整備されてから、子どもたちの国語能力が向上し、期末試験で合格点を取る児童が増え、留年率減少の報告が全支援校から届いています。
首都プノンペン市から150km離れたカンポット州では、パートナー団体・CADDPが、3つの集合村に設立した「チルドレン・スタディ・クラブ」を運営しています。クラブでは、肢体不自由児、自閉症や学習障害がある子どもたち30人が、国語、算数など学業補習やライフスキルを学んでいます。2022年5月、障害児やその保護者の生計向上のため「魚の飼育」のトレーニングや、「子どもと人権についての研修会」を開催しました。
また、障害児向けの教材が皆無なことから、今後の教材開発に向けてカンボジア教育省、国立図書館などへ、ヒアリング調査を実施しました。
長年にわたりエファと協働事業を行ってきたSCADP(Street Children and Development Program)が、2024年度に解散することになりました。それにともない、2022年8月にプノンペン事務所を閉鎖しています。プレアビヒア州での事業は、2025年3月まで規模を縮小しながら継続します。
プノンペン市の児童保護施設を運営するSCADPの事務所閉鎖にともない、児童保護施設事業を終了しました。そのため、保護施設で暮らしていた児童の保護者への説明会を実施し、通学に必要な教材を配布しました。施設は閉鎖しましたが、子どもたちとは今後もコンタクトがとれるように、連絡網を整備しています。
保育士の給与を支援してきましたが、SCADPの事務所閉鎖にともない、本事業は終了しました。
プレアビヒア州児童保護施設では、22人の子どもたちが共に暮らし、学校へ通っています。SCADPのプレアビヒア州での事業は2025年まで継続することから、エファは、児童保護施設の子どもたちへの支援として、学用品配布を継続します。
地域に中学校が無い辺境地に暮らしているために進学がむずかしく、また、経済的な事情により、義務教育を退学せざるをえない危機にある、学業優秀な子どもたち3 人に、2022年度の奨学金を支給しました。
プレアビヒア州では、いまだ義務教育を実施する公設小学校がない地域があります。エファでは、5つの村で、ノンフォーマルの教育機会を提供する「寺子屋教室」に通う児童380人に文房具配布し、また、寺子屋教室の教師に給与補填を行いました。
新型コロナウイルス感染症の影響から、教員養成学校入学時期が変更され、奨学生の選出が2023年6月になったために、2022年度の事業では選出基準の確認作業などを進めました。
「アジア子どもの家」奨学金事業は、1999年に、ハイフォン市へ500万円を委託、その受取利子を運用して奨学金を提供しています。本奨学金基金は、ハイフォン市児童保護基金が管理し、経済的に貧しいながらも優秀な成績を収めている子どもたちに奨学金を支給することを目的としています。
2022年度は、71人に一人当たり約5,500円の奨学金と、文房具一式を贈呈しました。
2021年にハイフォン市での障害児クラブ事業は終了しましたが、ベトナムでの事業で得られた知見と経験は、カンボジアの障害児を対象とした「農村部の障害児のライフスキル向上プロジェクト」と、ラオスでの「読書推進を通じた障害児の思考とスキル向上プロジェクト」に受け継がれます。
エファはこれからも、障害児が生きる力を高めるための活動を実施していきます。
2022年6月12日にエファの総会に引き続き、エファ・ジャパンシンポジウム2022「戦争・紛争・大規模災害、そして復興期において子どもたちに図書館ができること」を開催し、対面、オンラインを合わせてたくさんの方にご参加いただきました。また11月には、オンラインで開催された日本最大の図書館の展示会「図書館総合展」に出展し、「カンボジアと本の飢餓」と題したトークイベントを行いました。
また自治労の県本部と協働で、オンラインイベントの開催や報告会への登壇の機会をいただきました。
カンボジア、ラオスで障害がある子どもの支援を行っているエファだからこそ、国内の広報物も誰もが読みやすいものにしたいと考えました。
外国ルーツの方もご覧いただくことを想定し、ウェブサイトには、ボタン一つで他の言語に翻訳できる機能を備えました。
月に2回配信しているメールマガジン「エファ通信」は、視覚に障害のある方はもちろん、加齢などにより文字が見えにくい方、発達障害のある方など、活字による読書が困難な方に対し、文字や音声、画像を同時に再生できるデジタル録音図書版を作成しています。
団体紹介パンフレットや、エファパートナー募集など、紙媒体の広報物のリニューアルも実施しました。
多くの方にエファの活動を知っていただくためにInstagramとLINEで公式アカウントを立ち上げました。Facebookも引き続き活用して、現地の活動だけではなく、生活の様子、文化紹介、また日本で行うイベントやキャンペーンなど、最新の情報を発信しました。
2023年3月1~31日まで、ラオスの障害児支援事業をサポートするためのクラウドファンディング「本の飢餓から子どもたちを守りたい。ラオス障害児にバリアフリー図書を」を実施し、113人もの方から1,063,500円のご支援をいただきました。
また夏募金、歳末募金を実施し、合計2,047,000円の支援をいただきました。
活動計算書 [税込](単位:円)自2022年4月1日 至2023年3月31日
(ここでは、主要箇所のみ記載しています。)
Ⅰ. 経常収益
経常収益計 41,289,629
Ⅱ. 経常費用
事業費計 28,747,351
管理費計 11,892,898
経常費用計 40,640,249
Ⅲ. 経常外収益計
経常費用計 333,400
Ⅳ. 経常外費用
経常収益計 0
貸借対照表 [税込](単位:円) 2023年3月31日現在
Ⅰ. 資産の部
資産合計 39,659,905
Ⅱ. 負債の部
負債合計 2,189,915
Ⅲ. 正味財産の部
正味財産合計 37,469,990
負債及び正味財産合計 39,659,905
【貸借対照表の注記】
正味財産中、使途等が制約された寄付金(指定正味財産)は、1,609,883円です。計算書類の注記2でその内訳を報告します。
2022年度収入・支出の内訳
収入 41,289,629円
受取寄付金 89%
受取助成金等 2%
事業収益 1%
受取会費 8%
支出 40,640,249円
ベトナム事業 1%
カンボジア事業 24%
ラオス事業 25%
国内事業 19%
収益事業 2%
人件費 20%
その他収益経費 9%
(ここでは、主要箇所のみ記載しています。)
注記1:重要な会計方針
計算書類の作成は、NPO法人会計基準(2010年7月20日策定 2017年12月12日改定 NPO法人会計基準協議会)によっています。
(1)棚卸資産の評価基準及び評価方法
棚卸資産の評価基準は原価基準により、評価方法は法定評価方法によっています。
(2)引当金の計上基準
退職給付引当金:職員の退職給付に備えるため、退職金規程に基づく期末法人都合要支給額により計上しています。
注記2:使途等が制約された寄付金等の内訳
複数年度にわたり使途等が制約された寄付金等の内訳は以下のとおりです。
当法人の正味財産は、37,469,990円ですが、1,609,883円は下記のように使途が制約されています。したがって使途が制約されていない正味財産は、35,860,107円です。
内容
ラオス
自治労東海地区連絡協議会 ビエンチャン都立図書館
自治労新潟県本部 タトーン村小学校図書館支援
自治労青森県本部 ドンクワイ村小学校図書館支援
自治労三重県本部 サンパンナ村小学校図書館支援
自治労東海地区連絡協議会 ナーハンケー村小学校図書室支援
自治労広島県本部 サントン郡小学校図書室支援
自治労広島県本部 サントン郡小学校図書室支援
富永誠治 思考とスキル向上のための読書推進プロジェクト
カンボジア
自治労福岡県本部 SCADPプノンペン児童保護施設支援
一般社団法人鹿児島県労働者福祉協議会
自治労岡山県本部 プレアビヒア児童保護施設支援
自治労熊本県本部 プレアビヒア寺子屋事業
合計
期首残高 2,131,764
当期増加額 960,000
当期減少額 1,481,881
期末残高 (期首残高+当期増加額-当期減少額の合計) 1,609,883
注記3:その他特定非営利活動法人の資産、負債及び正味財産の状態並びに正味財産の増減の状況を明らかにするために必要な事項
事業費と管理費の按分方法
共通する経費の内、給料手当、賞与手当、法定福利費、旅費交通費(人件費分)については従事割合に基づき按分しています。
共通する経費のうち、地代家賃、水道光熱費、リース料については、総額の30%を管理費に計上、70%を事業費(ベトナム、ラオス、カンボジア、国内、収益の各事業分に従事割合で按分)に計上しています。
※ここに記載された内容は、財務諸表から抜粋したものです。より詳しい会計報告をご覧になる場合は、ウェブサイト[https://www.efa-japan.org/efa-japan.org]の年次報告ページでご覧いただけます。
監査報告書
特定非営利活動法人エファジャパン 理事長 伊藤道雄様あて
2023年5月9日付け、同年6月1日エファジャパン第1回理事会において報告。
特定非営利活動法人エファジャパン 監事 宮原朝香、榎本朋子による署名、捺印
私たち監事は、特定非営利活動促進法第18条の規定に基づき、2022年4月1日から2023年3月31日までの事業年度の理事の職務の執行を監査いたしました。その方法および結果について、次のとおり報告いたします。
1.監査の方法およびその内容
監事は、理事および事務局の職員等と意思疎通を図り、情報の収集および監査の環境の整備に務めるとともに、理事会等に出席し、理事および事務局の職員等からその職務の執行状況について報告を受け、必要に応じて説明を求め、重要な決裁資料等を閲覧し、業務および財産の状況を調査いたしました。以上の方法に基づき、当該事業年度に係る事業報告について検討いたしました。
さらに、会計帳簿またはこれに関する資料の調査を行い、当該事業年度に係る計算書類(貸借対照表および活動計算書)およびその附属明細書ならびに財務目録について検討いたしました。
2.監査意見
(1)事業報告等の監査結果
①事業報告は、法令および定款に従い、法人の状況を正しく示しているものと認めます。
②理事の職務の執行に関する不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実は認められませんでした。
(2)計算書類およびその附属明細書ならびに財産目録の監査結果
計算書類およびその附属明細書ならびに財産目録は、法人の財産および損益の状況をすべての重要な点において適正に示しているものと認めます。
以上
エファジャパンは、すべての子どもたちが可能性と創造性を発揮し「自分ものがたり」を描ける社会の実現のための事業の実施を加速させます。
その思いに共感し、一緒に歩んでくださるエファパートナーの募集を本格的に開始し、本の飢餓の撲滅、子どもたち一人ひとりの生きる力の向上に努めていきます。
開発途上国に暮らす障害者が利用可能な書籍(点字、音声、大活字本など)は非常に限られ、毎年出版される本の中でわずか1%以下と推定されています。世界盲人連合(WBU)はこの状況を「本の飢餓(Book Famine)」と名付けました。2022年度、カンボジアとラオスで現地の図書館、出版社、書店の調査を行いましたが、障害がある子どもたちに適した本は皆無でした。点字図書なども開発され始めていますが、全国には行き届いていません。エファは、両国で、視覚障害者のほかに学習障害、知的障害、精神障害の方にとって有効であることが国際的に広く認められているマルチメディアDAISY(デジタル録音図書)の制作を進めます。またデジタルだけではなく、布絵本や紙の絵本も大切にしていきます。将来的には、現地の人たち自らが教材を制作するためのロードマップを考え、教材開発の中期計画を描いていきます。
海外で普及展開を開始し始めた、障害がある子どもたちのためのマルチメディアDAISY開発。そこで得られる知見や技術を生かして、日本で暮らす外国ルーツの子どもたちに多言語対応したマルチメディアブックを届けていきたいと考えています。多文化・多言語環境の中で育つ子どもたちにとっては、日本語習得の難しさに加え、親子の間での母語継承が大きな壁となりつつあります。増え続ける外国ルーツの人々が、自らの権利を享受し、社会的な責任を果たし、共生社会の一員として暮らしていけるよう、エファもできる支えを模索していきます。居場所づくりや学習支援、子ども食堂といった現場で、寄り添いながら活動を続けるNPOやボランティアグループ、自治体等との協働も視野に入れていく予定です。
長きにわたり戦禍の中におかれ、終戦後も極度の飢餓と貧困に苦しむベトナム、カンボジア、ラオスの人々の姿を私たちエファは19年にわたり見つめてきました。その爪痕は、人々の心と大地に残り、特に自ら声を上げることが難しい子どもたち、とりわけ障害がある人たちに暗い影を落とし続けています。日本でも障害がある人たちは、いまだ様々な壁に立ち向かわなければなりませんが、エファが寄り添いを続けてきた国々では、社会から忘れられた存在として扱われているのが現実です。
貧しさの中にあっても、障害があっても、情報や知識を得て、自分の力で生き抜く術を身に着け、「自分ものがたりを描いていくことのできる社会」をアジアで、そして日本でも実現していきたいと願っています。
その実現のため、月々1,000円、一日あたり約35円から「本の飢餓」撲滅に向けた取り組みを応援いただくマンスリーサポータ制度「エファパートナー」を新たにスタートします。
2023年3月31日 時点
【会員】
正会員 111人
シニア会員60人
賛助会員個人 36人
賛助会員団体 34団体
【エファパートナー】
エファパートナー個人 71
エファパートナー団体 44
【役員】
理事長 伊藤 道雄 特定非営利活動法人アジア・コミュニティ・センター21(ACC21)代表理事
副理事長 川本 淳 全日本自治団体労働組合(自治労)中央執行委員長
理事 学頭 貴子 株式会社日本経済新聞社 編集 金融・市場ユニット記者
理事 木下 究 公益社団法人東京自治研究センター 理事
理事 栗本 正則 特定非営利活動法人FAIRROAD 副理事
理事 関 尚士 特定非営利活動法人エファジャパン 事務局長
理事 高橋 篤 こくみん共済coop(全労済)自治労共済推進本部 副本部長
理事 玉井 一匡 玉井一匡建築研究所 代表
理事 渡戸 一郎 明星大学名誉教授
監事 榎本 朋子 全日本自治団体労働組合(自治労)総合企画総務局長
監事 宮原 朝香 特定非営利活動法人ゴールドリボン・ネットワーク 事務局長
顧問 イーデス・ハンソン 公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本 特別顧問
【事務局】
事務局長 関 尚士
海外事業担当 鎌倉 幸子
【エファジャパンが実現したい社会(ビジョン)】
すべての子どもたちが可能性と創造性を発揮し、自分ものがたりを描ける社会に。
【エファジャパンの使命(ミッション)】
●どんな困難な状況にあっても、未来を拓きたいと願うアジアの子どもたちに、教育を通じて生きる力を培います。
●アジアの開発途上国の障害がある子どもたちが、安心して生きられる環境を家族やコミュニティと共に創ります。
●さまざまな価値観と文化に触れ、多様性を豊かさとして捉え、アジアの子どもたちが、共に生きることのできる社会づくりに、地域の人々と取り組みます。
【エファジャパンの行動指針(バリュー)】
●一人ひとりの違いを認め合い、尊びます。
●つつみこみ、みまもり、みとめあう家族、コミュニティの力を支えます。
●選択肢という可能性を生みだし、広げます。
●最適な“情報”、“居場所”を届けるために、より良い手段を考え抜きます。
●自らが変わろうとする意志と行動を応援します。
●共に歩み、学び、成長します。
特定非営利活動法人エファジャパン
理事長 伊藤 道雄
平素よりエファジャパンの活動にご理解とお力添えをいただき、心より御礼申し上げます。
旧年度も新型コロナウイルスの感染状況は一進一退でしたが、それまでの2年間とは異なり、一筋の光が見え始めてきた一年であったと感じています。
市場経済とグローバル化が進んでいく中でとり残されてきた人々も、オンラインとICT(情報通信技術)を活用すれば「情報」へアクセスし、生きていくための知識と技術を身につけ、貧困の壁から這い上がっていくことができる。当事者だけでは解決できなかった障害がある子どもたちの課題もデジタル技術と本の力を活かして克服していくことができる。カンボジアとラオスで新たに開始した障害がある子どもたちのための教材開発や場所・人づくりを通じ、そう確信をした一年でした。
そしてもうひとつ。制約はあっても顔を突き合わせ、想いやビジョンを語りあう作業を再開できたことです。応援いただいてきた方たちとも直接にお会いし、共にとり組んできた現地スタッフやパートナー団体とも約3年ぶりで対面が叶いました。オンラインがもたらす力も活かしながら、気持ちを通い合わせたとり組みを大切にして、2023年度を踏み出してまいりたいと思います。
エファジャパンは2023年度から「本の飢餓」をなくすとり組みに挑戦します。未知の世界に向けて扉を開き、想像する力や他に共感する力を育み、ときに自分の生き方、道標さえも授けてくれる本の世界を皆さまとともに創ってまいります。新年度もどうぞよろしくお願いいたします。
エファパートナーとは月々1,000円からの支援で、エファが取り組む「本の飢餓」の撲滅に向けた活動を応援いただくマンスリーサポータ制度です。
寄付金は、その時々に最も必要な事業・活動へ使わせていただきます。
パートナーの皆さまには、エファが目指すビジョン、「すべての子どもたちが可能性と創造性を発揮し、『自分ものがたり』を描ける社会」の実現に向け、子どもたちの成長や社会の変化を共に見守っていただき、また、皆さまご自身の「自分ものがたり」も描いていただくことを目指していきたいと思います。
私たちと一緒に、この世界を「本の力」で変えていきませんか。
お申込み・詳細は特設サイトをご覧ください
【パートナー特設サイト】 https://www.efa-japan.org/partner/
エファは、SDGsの達成に向け行動します。
1 貧困をなくそう
4 質の高い教育をみんなに
10 人や国の不平等をなくそう
16 平和と公正をすべての人に
17 パートナーシップで目標を達成しよう
2023年9月15日発行
発行人 伊藤道雄
編集協力 (株)MAG MAG、莇田清二
発行所 特定非営利活動法人エファジャパン
〒102-0074 東京都千代田区九段南3-2-2 九段宝生ビル3階
TEL:03-3263-0337
FAX:03-3263-0338
Email:info@efa-japan.org
https://www.efa-japan.org/
※エファジャパンは、全国の地方公共サービスに携わる人たちが応援する、国際協力NGOです。
アジアの子どもたちへの教育文化支援・福祉支援を行っています。
※認定NPO法人であるエファジャパンへのご寄付は、税制優遇の対象です。