エファジャパンは、戦禍に苦しみ、終戦後も極度の飢餓と貧困に苦しむベトナム、カンボジア、ラオスの人々の姿を、長い間見つめてきました。
紛争の爪痕は、彼らの心と大地に残り、自ら声を上げにくい子ども、女性、高齢者、障害がある人たちに影を落としています。この苦しみ、悲しみ、憎しみは、将来にわたり、負の連鎖として受け継がれていく。それは日々の報道で知るウクライナ紛争のあり方と、なにひとつ変わりません。このような現実に目を背けてはならないと思うのです。
未来を拓きたいと願う子どもたちが、安心して生きられる環境を守りたい。さまざまな価値観と文化に触れながら、その多様性を豊かさとして捉え、共に生きることのできる社会を創造していく。エファはその使命に基づき、アジアの子どもたちが希望と夢に満ちた「自分ものがたり」を描けるよう、努力を続けてまいります。
支援者
会員
正会員 | 121人 |
シニア会員 | 61人 |
賛助会員個人 | 33人 |
賛助会員団体 | 34団体 |
総会
(正会員で構成)
・エファパートナー
(個人79、団体59)
・一般寄付者(個人、団体)
・事業指定寄付者(個人、団体)
・ボランティア
理事会
理事長 | 伊藤 道雄 認定NPO法人アジア・コミュニティ・センター21代表理事 |
副理事長 | 川本 淳 全日本自治団体労働組合中央執行委員長 |
理事 | 学頭 貴子 株式会社日本経済新聞社編集金融・市場ユニット記者 |
理事 | 木下 究 公益社団法人東京自治研究センター研究員 |
理事 | 栗本 正則 NPO法人FAIRROAD副理事 |
理事 | 関 尚士 エファジャパン事務局長 |
理事 | 高橋 篤 こくみん共済coop自治労共済推進本部副本部長 |
理事 | 玉井 一匡 玉井一匡建築研究所代表 |
理事 | 渡戸 一郎 明星大学名誉教授 |
監事 | 榎本 朋子 全日本自治団体労働組合総合企画総務局長 |
監事 | 宮原 朝香 認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク事務局長 |
顧問
イーデス ハンソン 公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本特別顧問
事務局
事務局長 | 関 尚士 |
経理・総務 | 高田 俊哉 |
海外事業 | 鎌倉 幸子 |
広報・ファンドレイジング | 増村 康亮 |
2022年3月31日 時点
平素よりエファジャパンの活動にご理解とお力添えをいただき、心より御礼申し上げます。
新型コロナウイルス感染拡大がはじまって以来2年と半年が経過しました。一筋の明かりが見え始めたとはいえ、今もって感染防止と生活・経済のバランスを取りながらの手探りの日々が続いています。不幸にも命を落とされた多数の方たちがおられるなか、持続可能な開発目標(SDGs)報告2021年によると、2020年には新たに1億1,900万から1億2,400万もの人々が「極度の貧困」へと追いやられました。この増加は過去数十年間で初めてということです。
そして2022年4月24日。世界を驚かせたロシアによるウクライナ侵略は、世界に大きな衝撃を与え影響を及ぼしました。数多くのウクライナ市民が命を奪われ、街は破壊され、若いロシア兵も命を落とし、そしてウクライナから逃れた難民数は700万人を超え、これらの人々はこれからの生活の見通しもついていません。
コロナ感染拡大に加え、世界で多発し続ける戦争や紛争による人道危機。経済・食料危機はより広範な地域に急速に広がり、アフリカの人々を含む世界で最も脆弱な人々への影響はとりわけ深刻で、今後さらに貧富の格差が拡大する恐れがあります。
人類の喫緊の優先課題は戦争・紛争を終焉させ、平和を取り戻し感染拡大と闘うことです。私たち市民一人ひとりが声をあげ、世界の人々と共に政府に働きかけ収束に向けて手を携えていくことから始まります。
エファは、その使命に基づき、すべての子どもたちが安心に生きることができ、希望と夢に満ちた「自分ものがたり」を描けるよう、不断の努力を続けてまいります。2022年度は新5か年計画、「エファビジョン2022-2026」のスタート年です。障害があり、貧困の中にある子どもたちに一層光をあて、そうした子どもたちが力強く生きることができるよう、サポーターの皆さまと共に努力してまいる所存です。
本年度も引き続き変わらぬご理解とご支援を宜しくお願い申し上げます。
特定非営利活動法人エファジャパン
理事長 伊藤 道雄
【エファジャパンが実現したい社会(ビジョン)】
▶ すべての子どもたちが可能性と創造性を発揮し、自分ものがたりを描ける社会に。
【エファジャパンの使命(ミッション)】
▶ どんな困難な状況にあっても、未来を拓きたいと願うアジアの子どもたちに、教育を通じて生きる力を培います。
▶ アジアの開発途上国の障害がある子どもたちが、安心して生きられる環境を家族やコミュニティと共に創ります。
▶ さまざまな価値観と文化に触れ、多様性を豊かさとして捉え、アジアの子どもたちが、共に生きることのできる社会づくりに、地域の人々と取り組みます。
【エファジャパンの行動指針(バリュー)】
▶ 一人ひとりの違いを認め合い、尊びます。
▶ つつみこみ、みまもり、みとめあう家族、コミュニティの力を支えます。
▶ 選択肢という可能性を生みだし、広げます。
▶ 最適な“情報”、“居場所”を届けるために、より良い手段を考え抜きます。
▶ 自らが変わろうとする意志と行動を応援します。
▶ 共に歩み、学び、成長します。
■ ビエンチャン都立図書館運営支援
ラオスの公共施設の開館時間は、平日9時から16時までです。2021年度は仕事帰りの人や学生が利用できるようにするために、16時から18時、週末は9時から12時の開館延長を実施しました。それにともなって職員へ時間外手当を支給しました。
首都ビエンチャンがロックダウンになった時期があり、その結果、2021年の利用者数は5,119人と2020年(利用者数:18,376人)の半分以下でしたが、都民の学びを支える拠点としてソーシャルディスタンスを徹底しながら開館しました。
なお2021年は、ビエンチャン都立図書館開館から15年目にあたる年です。15年間のデータを収集・分析したり、インタビューを行ったりして評価報告書としてまとめました。
■ 学校図書館・図書室運営支援
2021年4月から2022年2月まで、新型コロナウイルス感染症の影響で学校が休校となり、児童は自宅待機・自宅学習を余儀なくされました。この間、郡を超える移動に制限がかかっていたため、本の配布などは学校が再開された2月以降に行うことになりました。
2021年度はビエンチャン都およびサワンナケート県にある8つの小学校の図書館・図書室の運営支援として、絵本を中心に図書930冊を配布。また2年前に図書室を設置した4校については、ラオス国立図書館の職員が追加の技術指導を行っています。
■ 図書管理システム導入支援
ラオスの公共図書館は、まだ図書館システムが導入されていない館が多く、図書館員は貸出・返却の記録を手書きのノートで管理しています。蔵書を検索ができるコンピューターがないため、利用者は本の有無を図書館員に聞く必要がありました。
そこで、ラオスの北部にあるシェンクワン県およびサヤブリー県の県立図書館への図書管理システムの導入を支援しました。システムがインストールされたPCおよび必要な備品一式を配布するだけでなく、図書館員がスムーズに利用できるように、ラオス国立図書館職員による研修会を行いました。
また研修会後、モニタリングを実施し、追加の技術指導を実施しています。
■ 思考とスキル向上のための読書推進プロジェクト
2021年9月より「ラオス子どもの家財団」と協働で、障害がある子どもたちと少数民族の子どもたちを対象とした事業を開始しました。
このような子どもたちが多い学校を対象とした読書推進活動により、障害がある子どもたちが文字の読み書きだけではなく、生きるのに必要な情報に触れる機会をつくるのが目的です。
2021年度は、ラオス子ども財団の施設内にモデルとなる図書室を設置しました。
ドンクワイ村小学校図書館モニタリング
ビエンチャン都立図書館
図書管理システム導入研修会
タトーン村小学校図書館モニタリング
ラオスの来期活動:各図書館の管理システム導入を支援
2022年度はベトナム国境にあるフアパン県立図書館への図書管理システムの導入支援を行います。それにより都市部(ビエンチャン都、ビエンチャン県)、地方部(シェンクワン県およびサヤブリー県)、そして辺境部への導入が行われることになります。
また2021年度に行ったビエンチャン都立図書館評価に基づき、都立図書館だけでなく、図書館を管轄しているビエンチャン都情報文化観光局とも、今後の図書館のあり方について協議する予定です。
■ 国立幼稚園教員養成学校の奨学金支援
カンボジアでは、幼稚園教員の資格が取れる教員養成学校が首都プノンペン市にしかありません。エファは2021年度、地方の高校を優秀な成績で卒業しながらも、経済的に困窮しているため進学を断念しなければならない学生14人を対象に、奨学金による支援を行いました。
■プノンペン市およびプレアビヒア州 児童保護施設支援
カンボジアには、経済的な理由などで保護者に育児放棄された子どもたちがいます。エファは彼らを預かっている児童保護施設の運営を支援中です。
プノンペン市で22人、プレアビヒア州で45人の子どもたちが、児童保護施設で寝泊まりをしながら、学校に通っています。2021年度は、子どもたちの文房具や教科書、日用雑貨などを支援しました。
■プレアビヒア州の奨学金支援
中学校がない辺境地に暮らしていて、経済的な事情により退学の危機にある学業優秀な子どもたち3人に、2021年度の奨学金を支給しました。この奨学生たちは児童保護施設にて生活をしながら、元気に中学校へ通っています。
■ 国境地帯のノンフォーマル(学校外)教育支援
プレアビヒア州はタイとの国境にあり、内戦中は長らくポル・ポト派の支配下に置かれていました。そのため公教育の整備が立ち遅れ、いまだに小学校がない村も存在します。
そのような5つの村に、子どもたちに読み書き、計算を学ぶことができるノンフォーマル教育を受け
られる寺子屋を設置しています。エファは2021年度、寺子屋で学ぶ380人の子どもたちへの文房具支援、寺子屋の先生に対する給与補填を行いました。
■ カンダール州学童保育所支援
2021年度、カンダール州バンテアイデック村の学童保育所で働くスタッフの給与を支援しました。バンテアイデック村は工場で働いている家庭が多いこともあり、この学童保育所は親が仕事に行っている間、子どもたちが遊び、学ぶことができる場所となっています。
■ カンボジア農村部の障害児のライフスキル向上プロジェクト
2021年9月に、首都プノンペン市から150キロ離れたカンポット州にある3つの集合村にチルドレン・スタディ・クラブを開設しました。このクラブには障害がある子どもたち30人が放課後に集い、学ぶ場となっています。
エファは、クラブに通う子どもたちに生活に役立つ情報を届けるため「子どもの権利条約」「公衆衛生」などのワークショップを開催しました。また、障害があっても担うことのできる仕事として、家庭菜園のトレーニングを開催。保護者も一緒に受講してもらいました。
クラブ開設直後はずっと下を向いていた子どもたちですが、「大きな声で黒板の字を読むようになった、夢を語るようになった」との報告が届いています。
プレアビヒア州カンピン村寺子屋教室
国立幼稚園教員養成学校
ノンフォーマル教育(寺子屋)への文房具支援
プノンペン市児童保護施設物資配布
カンボジアの来期活動:2022年度は各事業をさらにアップデート
「カンボジア農村部の障害児のライフスキル向上プロジェクト」では障害がある子どもたちが通うモデルとなる図書館を整備し、そのための教材開発などにも力を入れていきます。
児童保護施設、カンダール州学童保育所、ノンフォーマル教育の各事業はカンボジアのNGOであるSCADP(Street Children and Development Program)と共同で実施しています。これまで行ってきた事業の振り返りと、現在の現地ニーズの調査を行い、今後の協働事業について見直しや発展させていく予定です。
■「アジア子どもの家」奨学金事業
「アジア子どもの家」事業は、1999年よりハイフォン市に500万円を委託し、その受取利子を運用して奨学金を提供しています。本奨学金基金の目的は、ハイフォン市児童保護基金が管理し、経済的に貧しいながらも優秀な成績を収めている子どもたちに奨学金を支給するためにあります。
2021年度は、70人に一人当たり約5,000円の奨学金と、文房具一式を贈呈しました。
■ ハイフォン市障害児支援事業
2014年から2018年まで5カ年にわたり、ハイフォン市障害児支援事業として運営支援していた「障害児クラブ」総括を、2019年度に行っています。その後、新型コロナウイルス感染症の影響で渡航制限がかかったため、総括の結果報告と今後の話し合いが保留されていました。
2021年度も、渡航の見通しが立たないことから、カウンターパートであるハイフォン市ソーシャルワークセンター(SWC)へ書面報告、ならびに今後についての協議を行いました。
ベトナムの来期活動:障害児クラブは2021年度で事業終了
アジア子どもの家奨学金事業では、71人の子どもたちに奨学金と文房具一式の支給を行う予定です。
ハイフォン市障害児支援事業については、エファから総括で示された残された課題と教訓を踏まえ、障害児クラブ事業の定着と発展のため事業継続提案を行いました。しかしながら、SWCからは「発達障害児の支援に移行したい」との意向が示され、最終的な協議の結果、障害児クラブは本振り返りをもって事業終了となりました。
■ クラウドファンディング・募金事業
エファ初のクラウドファンディング「生きる力向上プロジェクト!カンボジア障害児とお母さんに教育を」を2022年3月1日から3月30日までの間で実施しました。合計で144人、また3つの企業・団体の皆さまから、1,522,000円もの寄付をいただきました。また「夏募金キャンペーン」と「歳末募金キャンペーン」も実施。総額1,913,530円のご支援となりました。
■リサイクル募金・グッズ販売事業
リサイクル募金ではハガキ、切手、古本、CD、DVDなどのご支援をいただき、総額409,053円となりました。
またエファ支援国の女性や障害がある方が製作した布製品などを現地で仕入れ、「エファグッズ」として販売。注文をいただいた自治労県本部のお名前を入れたトートバックも販売し、こちらは総額382,500円のご支援となっています。
■ 集会・イベント事業
2021年6月総会後にオンラインイベント「ラオスNOW・エファNOW」を開催しました。ラオス国立図書館、当法人ビエンチャン事務所、東京の総会会場を結び、意見交換などを実施しました。
また夏休みオンラインイベントとして、自治労組合員のご家族向け企画・オンラインでのサマーキャンプを8月に展開しました。
日本国内の来期活動:イベントを積極的に開催予定
2021年度施策は、2022年度も引き続き実施いたします。クラウドファンディングや募金キャンペーンは、目標額をアップ。さらなる告知活動を展開していきます。
また、新型コロナウイルス感染症の感染状況を見ながらではありますが、イベントの実施・参加を積極的に行います。2022年度は、企画を一新し、エファ主催のイベントを実施していく予定です。
特定非営利活動法人エファジャパン 2021年度年次報告書
発行 特定非営利活動法人エファジャパン 2022年8月15日
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