教育を受けられないことで、読み書き・計算ができない状態で大人になると、仕事に就けず、収入も少なく、本人や子どもも教育を受けられないという悪循環が続いてしまいます。読み書き・計算が出来ないということで、社会サービスを受けるための情報にアクセスできなかったり、経済的な搾取や生命の危険(薬などの説明が理解できなかったりするなど)に晒されるリスクも高まります。
家庭の厳しい経済環境、家計を助けるための中途退学、女の子に教育は必要ないという考え方、物理的に学校が家の近くにない(特に農村地域)さまざまな理由で親と暮らせず路上生活を強いられている子どもなど
小学校に通うことができなかった、途中でやめざるを得なかった、また生まれてから大人になるまで絵本や本に一度も触れたことがなかったり保護者も読み書きができなかったなどの理由で基本的な読み書きができないまま大人になってしまった人たちが数多くいます。
基本的な読み書きや計算ができないと、専門的な技術を身につけたり、仕事に必要なスキルや情報を得たり、習得することが難しくなります。そのため労働条件が厳しくなったり、選択できる職業の幅が限定されるなどの問題が起こってきます。
基礎教育を受けられたかった人が、安定した収入を得る仕事に就くことは非常に難しいと考えられ、過酷で危険な労働条件でも低賃金で働かざるを得ない状況があります。また読み書きや計算ができないと、自分や労働者としての権利や法律、契約、様々な制度がわからず、だまされ搾取されたり、機会を逸してしまうリスクも高まります。
カンボジアでは2009年に障害児教育に関するマスタープランを策定されました。しかし様々な障害を抱える子どもたちが、適切で十分な教育を受けられる環境、施設、福祉制度の整備が特に農村部で進んでいない状況です。教材や専門的知識をもつ教員、地域コミュニティの理解、情報にアクセスするための知識やスキルが不足している状況です。
カンボジア全体 | 約82% |
障害児 | 約23% |
出典)Public Education Statistics & Indicators 2018 – 2019
General Population Census of the Kingdom of Cambodia 2019(2020年10月)
中学校 | 都市部 | 約23% |
農村部 | 約14% | |
高校 | 都市部 | 約3% |
農村部 | 約1% |
出典)General Population Census of the Kingdom of Cambodia 2019(2020年10月)
貧困により家族と一緒に生活することができない子どもや、さまざまな理由でストリートチルドレンになった子どもたちが、安心安全に暮らせる、保護施設の運営支援と進学支援(奨学金基金事業)おこなっています。カンボジアの首都プノンペン市とタイとの国境地域であるプレアビヒア州の2か所の施設では、現在約70人の子ども達が、共同生活を送りながら、通学や勉強を続けています。
家の農作業を手伝うため、家計を支えるため、近くに学校がないため、女の子だからなどの理由で学校に通えない子どもたちが暮らすカンボジア国境地域に位置する、プレアビヒア州にある5つの村で寺子屋教室の運営支援を行っています。
就学年齢を超えてしまったり、途中で学校に通うことを諦めてしまった子どもや若者などが年齢に関係なく、自分の意志に基づき、学びたいと思った時に、何時からでも学べる場所、機会づくりを行っています。
日々の生活に必要な読み書きや、健康、安全に暮らすための保健、衛生のことなどを学びます。大人や地域の人たちに「教育」の大切さを理解してもらうことは、継続的な学びにもつながると考えています。
農村地域で暮らす人々が本や外部の情報に触れる機会は限られています。また情報をどのように入手し、そしてその活用の仕方を学び、身に着けることも今後の生活をより良くしていくためにはン不可欠です。
地域の人たちの継続的な理解と継続的で自立的な運営のためには、読み書き計算だけでなく、家庭での生活や収入の向上につながる、知恵や知識、技術を子どもだけでなく大人も習得できるプログラムなども取り入れていきます。
子どもも大人も同じ地域やコミュニティで暮らす人々が互いを知り、情報交換し、学びあう「場」が寺子屋教室です。そのような機会をつくっていくことが、自立的で持続可能な地域づくりのための第一歩と捉えています。
カンボジアには幼稚園教諭の養成校(PSTTC)は1校しかありません。保護者が病気を抱えていたり、自身が孤児であるなど、経済的に困難な状況にありながらも幼稚園教員を目指す、学生への支援を行っています。
訓練生の声
昔から小さい子どもたちの面倒を見たり、勉強を教えたりすることが好きでした。子どもたちに教育を受ける機会を与えることはこの国にとってとても大切です。私は教員として故郷に戻りたいと思っています。近年、私の村では教員が不足しています。農村部では教育の大切さを理解していない人々もいます。村に戻り教育の大切さを伝えていきたいです。
チェング・シレアット(女性、22歳)プーサット州出身
カンボジアでは、障害を抱える子どもたちの小学校就学率が非常に低く、都市部と農村部での「格差」もあります。適切な施設や教材、専門的知識をもった教員も不足していたり、また障害児への偏見や差別から、子どもを外に出したり、学校に通わせることをことためらってしまう保護者もいます。障害のある人々を取り巻く環境は厳しく、大人になっても職を得ることも難しい状況です。そこで自分で力で生きてくための能力(ライフスキル)を学び、身につけられる、場所と機会を届ける活動を農村部カンポット州で始めました。障害や差別に負けず学ぼうとする子どもたちが、私たちが運営する3つの村の「チルドレンスタディクラブ」に通っています。
これらの課題を解決していくための取り組みを、現地パートナーのCADDP、地域の人々、学校、行政などと連携して行っていきます。